製薬会社とオレオレ詐欺(10/7改訂)

先週末と言っても2日前のことであるが、私は滅多に製薬会社主催の講演会などには行かないのだが、講演内容が臨床試験の見方、考え方という面白そうな内容だったので何年かぶりに出かけてみた。

他の提言でも書いているが企業責任、特に国民の生命、健康にかかわる製薬会社の公的責任は年々大きくなっているはずなのに他の業種の企業に比べてモラルの低下が甚だしいと思われる。

ただ一方で製薬会社だけの責任かというと製薬会社と癒着しているとしか思えないような医療行政、民間報道機関の在り方にも問題があると思われる。

そして最終的には医療従事者自身、医師の責任も大きいと思う。

そんな中でいかにして副作用などから国民の健康を守り、医療費の抑制につなげてゆくのかという点で今回の講演は非常に参考になった。

ただ、あくまでも製薬メーカー主催の講演会であり、ある意味では主催メーカーにとって有利な講演内容になることは否めないがそれも考慮して差し引いたうえでの提言をしてみたい。

講演内容としては報道でも盛んに取り上げられた降圧剤ノバルテイスのデイオバン、武田薬品のブロプレス2剤がいかに臨床試験データを改ざんしたり、解析をごまかして医療機関にプロモーションして売り上げを伸ばしたか、

そのやり口と、医師はどのようにすれば製薬会社に騙されずにすむのか、裏返せば医師の責任と、今後の臨床試験の在り方であった。

両剤に関しては意図的なデータの改ざんや後付け解析が行われ、組織的な販売合戦を繰り広げ莫大な利益を上げ、一部の臨床データーがおかしいのではないかという意見は数年間放置されその間も利益を上げ続けた。

両社とも役員の減給など含めていわゆる社会的責任を取った形になってはいるが講演を聞いていて二つのことを思った。

一つは今回の事件は最近まで騒がれていた食品の産地偽装などと構造的に同じことをしているわけであるが

何故かそこまで悪いことをしているように社会的にも医療業界全般としてもそしてMR含めた当事者企業が思っていないことである。

では何故そうなんでしょう。

一つにはそもそもその薬剤の持つ臓器保護作用やアムロジピンなど他剤との比較は実際の医療現場ではなかなか評価しにくく製薬会社のいわば言ったもん勝ちということがある。

蓋し、その評価には時間がかかったり、個人差が大きいからである。そういった意味で臨床医がその嘘を実際の臨床の場で見抜くことが難しいことであるからだと思う。

そういう点を逆に言えば製薬会社は逆手にとってなんだってありと安易に考えているところがある。

他方、法律的観点から言えばこういったケースは刑法上でいえば詐欺罪を構成するとも思われる。

詐欺罪の成立のためには1)欺罔行為2)欺罔行為による相手側の錯誤3)財物の交付、財産上の不法の利益が必要となる。

実際に当てはめてみると製薬会社のMRによる最終的な欺罔行為、医師の錯誤、錯誤に基づく患者への医師の処方という流れになるのだが

ここで問題なのが3)であると思われる。

私見から言えば薬剤が持っているとされた臓器保護作用や、他剤より効果が優れるというMRの言うことをうのみにして錯誤に陥って処方がされ結果的に製薬会社は莫大の不当な利益が得られたとして詐欺罪を構成すると思うが、

立証するうえで、実際の処方がどこまで錯誤に陥った処方だったかが証明が難しい点、

製薬会社が利益を得ているが医師も処方料や納入価よりおそらく高いであろう薬価に基づく診療報酬を得ていることで実際に処方した医師が利益を得ることはあっても金銭としては損害を受けていないことで公に問題になることがないのであろう。

実際には薬価の安いアムロジピンの代わりに薬価の高いデイオバンやブロプレスが処方されることによって税金である無駄な診療報酬が支払われ、

欺罔された部分では効果がない薬を患者さんは飲まされるという点で、

製薬会社から国民は大きな被害を受けているのであるが、産地偽装に比べて制度的に非常にわかりにくいだけなのです。

二つ目に思ったのがこの製薬会社による欺罔行為は非常にオレオレ詐欺と構造的に似ていることです。

製薬会社のトップがオレオレ組織の金主、それぞれの支店長が番頭、MRがプレーヤー、ダシ子、ウケ子になるのかと思う。

何が言いたいかと言えば組織的な犯罪行為と言っていいのではないかということです。

それとオレオレ詐欺集団もそうなのだけど金主や実際に被害者と接点を持つダシ子、ウケ子は細かい具体的な事情を知らないことが多い。

金主については捕まらないようにするためであり、ダシ子、ウケ子に関しては犯罪行為であることを知って躊躇するのを防ぐ意味があると思われる。

そういった意味でも非常に構造的に似ている。MRは無知なことが多い。

逆に言えば企業からみてMRは、無知でいてくれないと困るのです。

だからこそ医師に対して悪びれることなく素晴らしいある意味ではオレオレでいうプレーヤーとして鍛えられたプレゼンができる。それがさも優秀であるかと錯覚している。

オレオレでいう番頭である支店長などが掲げる目標に向かってひたすら欺罔行為を繰り返し続ける。疑問視する臨床医に対してはMRがマニュアル的な応答をする。オレオレでいう被害者に対する想定問答集と同じ構図だ。

給与もオレオレ詐欺でいう分け前と似ていて売り上げ目標と連動していることが多いいと思う。

一方、無知なだけにMRは自分たちが社会に対してどんなことをしたのかといういわゆる加害者意識も持つことも少ない。悲しいほど夜遅くまでもくもくと働き続ける。それが患者のためであることを信じて。そこには医療情報提供者としてのMRはいない。そこにいるのは違法行為のプレーヤーにすぎない。そして延々と被害者、被害額は増え続ける。

実際、両剤の違法行為による被害者数、被害額はオレオレどころではないと思われる。

言いすぎていることもあるかもしれない。

ただ、他の提言でも言っているように製薬会社は一般の企業より大きな公的な責任を負っている。医療費という税金を間接的にであれもらう立場であり、国民の生命に直接かかわっているという自覚が必要である。

世界の提言の中で取り上げている杉原ちうね

彼は国家の意向に反して外交官という身分より人として、多くのユダヤの人を救った。それに対して日本政府は外務省から追放してしまった。その後、長年かかって、海外からの圧力の中で身分回復をすることができた。そんなMRが出てきてくれることを切に待望している。

個を捨てて他者の痛みがわかる、個の中に全体を考えることのできるMRであってほしい。

最後に提言であるが、各製薬会社主体での臨床試験ではいずれにしても限界がある。ただ現在の制度を前提にするならば臨床試験の方法として二重盲検法が一番であり、後付解析は控えるべきだと思う。それ以上に最も重要なことは、製薬会社とどうしても癒着しやすい行政組織、大学(医学部)組織、学会組織、臨床医それぞれが自分たちが何のために誰のために医療に関わっているのかを見つめなおすことだと、寒くなった夜空を見上げながらふと思った一日だった。

 

2014年10月6日   文責 世界のたま   sign

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