Monthly Archives: 6月 2017

難民

今、世界は音を立てて軋みながら動き続けている
とても悲しい音を奏でながら

イギリスでは、テロが続く中、メイ首相がEU離脱交渉を有利に進めようとして議会選挙に打って出たが、結果的には保守党は過半数割れを起こした

アメリカでは、ロシアゲートに関し、元FBI長官が議会証言し、大統領訴追への動きもみられる中、トランプ大統領は、地球温暖化のためのパリ協定からの脱退を宣言した

サウジアラビアはイランとの関係を強めるカタールとの国交断絶を行う一方、アメリカとの間で12兆円に及ぶ武器取引を結んだ

フランスでは、マクロン大統領率いる保守党、共和国前進が議会の7割を占める圧勝に終わった

フィリピンでは、ドゥテルテ大統領が戒厳令を発し、南ミンダナオ島マラウィ市に占拠するイスラム国系武装勢力との交戦状態に入っている

トルコでは、エルドアン大統領よるクルド人勢力に対する軍事的、政治的弾圧が強化され、国会の解散、総選挙(国連監視団により不正とされる)により与党議員を増やし、クルド系議員を減らしたうえで、大規模な粛清を行った そして国民投票により憲法改正が決まり、2019年に新大統領の下での施行となっている 本格的な大統領独裁政治が始まろうとしている

韓国では、ムンジェイン大統領が新たな船出をして、北朝鮮、アメリカ、中国、日本との関係を模索している

中国では、習近平国家主席が打ち出した一帯一路という経済構想を推し進めている

これら以外にも世界中で、同時並行的に様々な動きがみられている 一つ一つの事象だけを見ているだけではわかりにくいが、立ち止って、すべての事象を客観的に眺めてみると、多くの国々で起きていることには共通点がある

それは、グローバル化の中での国家主権だ 
そうした状況下では民主主義は両立しえず、現にそうした多くの国で粛清が行われ、憲法秩序が機能不全に陥っている

そして行き着く先に待っているもの 

それは形が違っても独裁国家に他ならない

独裁国家の先に待っているもの

それは多くの難民だ

現実的に、世界中で、シリアから、アフガニスタンから、ソマリアから、スーダンから、ミャンマーから、何千万もの人々が、子供たちが、女性たちが、お年寄りが、病人たちが、国外、国内での難民生活を強いられている

日本においても今まさに、特定秘密保護法、安保保障関連法に続いて、テロ等準備罪に名を借りた共謀罪法案が強行採決されようとしている

主権者たる国民の内心の自由が侵害されようとしている

内心の自由とは人が人であるための核心である

その内心の自由を、私たちおバカな日本国民は、所詮は人工的に作られたものでしかないオリンピックや、豊洲市場や、2万円台に上昇しつつある株式相場や、一次的に盛り上がっている就職前線などとの引き換えに差し出そうと、失おうとしている

平和の祭典とされているオリンピックとテロ、偽りの安全神話の中で再稼働されている原子力発電所と日本原子力開発機構大洗研究所での作業員5人の被ばく事故

それらは、ありとあらゆる人工的に作られたもの、科学の発達によって、人間の生活は、便利になり、豊かになったはずであるが、それはある意味で錯覚に過ぎないことを証明している

それらは、所詮は道具であり、手段にすぎない

目的にはなりえない

世界中で、所詮は目的にはなりえない手段でしかない原子力、オリンピック、豊洲市場、株価や、政治権力や、富や、民族や、そして国家のために、人が人であるために不可欠の核心たる内心の自由を手放そうとしている

水を求めて砂漠をさまよう旅人が蜃気楼を追い続ける様に

しかし、そこには決して旅人の喉を潤す水はない

所詮、蜃気楼に過ぎない

私には今、世界中で、富の中で、与えられた自由の中で生活を楽しみながら、政治的、経済的な原因で命と全財産をかけて海を渡り、大陸を横断する難民を拒否し、傍観している人々こそが

与えられた人工物や、楽しみや、自由のために、内心の自由を差し出し、失った人々こそが、真の難民なのではないかと思う

現代社会という砂漠を彷徨う難民なのだと思う

ドイツのメルケル首相が、トランプ氏のパリ協定からの脱退発言に対して、他国を頼ることはもはやできない 自らの運命は自らが切り開くべきだと語った

私たち難民は、決して思考停止してはならない 
私たち難民は、決して自然との共通感覚をなくして他者との共存を否定してはならない
決して難民のための難民であってはならない

     2017年6月13日 文責 世界のたま