国家賠償請求訴訟(広島高裁)口頭弁論を終えて~現代立憲民主主義の終焉

H30年10月11日、広島高等裁判所202号法廷にて私が提起している国家賠償請求訴訟控訴審第一回公判が開かれると同時に、追加の補充陳述、立証のために安倍内閣総理大臣、麻生太郎財務大臣、佐川宣寿前国税庁長官、太田充財務省理財局長、総理夫人安倍昭恵氏、安倍昭恵氏付き元職員谷査恵子氏(イタリア日本大使館一等書記官)ら6名の出廷要請、証人申請したが、却下され、口頭弁論終結、来る12月27日に判決となった。

今回の裁判は、第48回衆議院選挙に立候補し、選挙権行使した私の被選挙権、選挙権に対する公職選挙法第一条に反する違憲、違法行為を行った国、行政府に対する国家賠償法第一条に基づく国会賠償請求訴訟です。
(公職選挙法第一条)
 この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。
(国家賠償法第一条)
 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

第48回衆議院選挙は、安倍内閣による森友学園の土地賃貸、売買に関する財務省決裁文書の改ざん、それらの改ざん文書の国会、会計検査院への提出、財務官僚による国会での虚偽答弁、それらに関する安倍内閣の説明責任の放棄、そして、究極の説明責任の放棄たる第194回国会における主権者たる国民の代表者である国会議員に一言の反論も許さない冒頭解散、その結果として行われたものであった。

第48回衆議院選挙は国民をだまし、嘘で塗り固められた事実の下になされた選挙であった。

日本国憲法は、前文をはじめとして、正当に選ばれた代表者を通じた国家権力の行使を定めており、その日本国憲法の精神に則った公明且つ適正な選挙制度、選挙人の自由な意思表明を保障し、民主政治の健全な発達を促すとした公職選挙法第一条に明らかに反している。

国会議員選挙とは、国民の信を問う選挙である。
国民の信を問うために必要なもの、それは嘘偽りのない資料、答弁に基づく国会審議であり、会計検査報告である。そして民主政治にとって最も必要なものは、説明責任である。それらが存在しない状態での国会議員選挙は、目隠しをしたまま、耳を塞いだ状態での選挙以外の何者ではない。

第48回衆議院選挙は、説明責任を求める国会の臨時国会開催を、拒絶した上、ようやく開催された第194回国会を有無も言わさず冒頭解散した究極の説明責任の放棄の上になされたものであったことは厳然たる事実である。

第48回衆議院選挙は、日本国憲法が求める代表の正当性、公職選挙法第一条が定める公明性、適正性に明らかに反しており、その選挙の正当性はない。したがって、それによって選出された現在の国会議員、内閣総理大臣にもその正当性は有り得ない。

私の訴えに対して原審である広島地方裁判所での判決要旨が下記の通りである。

原審(広島地方裁判所)の判決事実
第48回衆議院議員総選挙において、原告の被選挙権や選挙権が侵害されたとは認められない。
原告は、第48回衆議院議員総選挙に立候補し、投票をした者である旨仮に、原告が主張する請求原因事実(改ざん、虚偽答弁など)が認められるとしても、そのことを自ら主張しているのであり、原告の被選挙権及び選挙権を行使する機会が保障されていたということができる。
原告は、第193回国会の審議等が改ざんされた公文書や虚偽答弁に基づいてなされたことをもって第48回衆議院議員総選挙の選挙自体の正当性や公明性・適合性が否定され、さらには原告の被選挙権及び選挙権が不当に侵害された旨を主張するが、原告独自の見解といわなければならず、採用することができない。
そのほか、本件記録によっても、原告の被選挙権や選挙権が侵害されたとは認められない。

原審の判決によれば、かつて我が国で行われた嘘で塗り固められた大本営発表に踊らされ、大政翼賛会が結成された下で行われた衆議院選挙すら肯定することを意味している。
国の答弁書においても、国会で官僚が虚偽答弁しようが、改ざん文書を国会や、会計検査院に提出しようが、国民にはなんら一切関係ないとしている。さらに、解散は国会議員のためのものであり、たとえ、私が、立候補者であれ、選挙権者であれ、何ら関係ないと断言している。

私は、控訴審第一回公判において、以下の陳述を補充、追加した。

H30年7月31日になされた国権の最高機関たる国会の大島衆議院議長の記者会見において、森友学園をめぐる財務省の決裁文書改ざん問題や、自衛隊イラク派遣での日報問題などについて、「立法府の判断を誤らせるおそれがあり、民主主義の根幹を揺るがすものだ。国民に大いなる不信感を抱かせる。」と発言したうえで「政府には、問題を引き起こした経緯や原因を早急に究明し、再発防止のための運用改善や制度構築を行うよう強く求めたい」と述べています。
さらに国権の最高機関たる国会に対しても「行政を監視すべき任にある国会も、責務を十分に果たしてきたかは検証の余地があるのではないか。国会として、正当かつ強力な調査権の、より一層の活用を心がけるべきだ」と述べています。
国権の最高機関たる国会の衆議院議長自らが、決裁文書改ざん問題は、立法府の判断を誤らせるおそれがあり、民主主義の根幹を揺るがすものだとしている。
そして、国民に大いなる不信感を抱かせる問題だと述べている。すなわち「国民の信」に直接関わる問題だと述べている。我が国の憲政史上、国権の最高機関たる国会の衆議院議長がここまで述べた事例はない。
国権の最高機関たる国会の衆議院議長自らが、改ざん問題は、国民の信、すなわち、まさにその信を問う国会議員選挙に重大な影響を及ぼすとしている。
しかし、被控訴人は、改ざん問題が、控訴人の選挙権、被選挙権と何ら関係ないとしています。
又、原審も改ざん問題が、控訴人の選挙権、被選挙権に侵害を与えたという主張を控訴人独自のものであるとしていますが、国権の最高機関たる国会の衆議院議長は、控訴人と同様な判断をしている。
しかも、これらの発言は、財務省による改ざん文書や交渉記録の開示、H30年6月4日になされた財務省決算文書改ざん等についての報告書の発表、H30年6月15日になされた改ざんに首相らの働きかけなしとする政府答弁の閣議決定以後になされている。
国権の最高機関たる国会の衆議院議長が、今年3月以降の政府による改ざん文書、交渉記録の開示、報告書の作成、首相らによる改ざん働きかけなしとする政府答弁の閣議決定をもってしても、国民の信に足る状況でないこと、今だもって、早急なその経緯、原因の究明が必要であるとしているのです。
すなわち、 国権の最高機関たる国会の衆議院議長が、行政府のみならず、国権の最高機関たる国会に対しても我が国の民主制度崩壊への警告を発しているのです。
司法権の独立もあり、直接明言されていないが、国会の最高機関たる国会に対して警告を発していることを鑑みれば、司法に対する警告であると控訴人は思う。
控訴人は、被控訴人に問いたい。国権の最高機関たる国会の衆議院議長の発言をもってしても、改ざん問題が、公職選挙法第一条が求める民主制の健全な発達を期するという条文に反していないと考えるのですか。
被控訴人は、国権の最高機関たる国会の衆議院議長の発言を、どう受け止めているのですか。
被控訴人は、憲法改正については盛んに論じているが、まず、現在ある日本国憲法を順守すべきことを、控訴人は強く望みます。
 
 最終の事実審であることも踏まえて、国が答弁書の中で要求する具体的事実究明のためにも下記6名の出廷、証人申請も同時に行った。
 
 安倍内閣総理大臣 行政の最終責任者であり、自らも国会において、全責任は最終的に自らにあると述べている。
又、財務省が公表した調査報告書では総理が「私や妻が関与していたら総理大臣も国会議員を辞める」と国会で答弁したH29年2月17日以降に、政治家の問い合わせに関する記録の廃棄が進められたとしている。
又、H30年4月9日民進党の大島氏が、第48回衆議院選挙が、改ざんと隠ぺいに基づいた選挙でありその正当性について国会質問をしましたが、安倍総理は「決算文書を精読してもらっても今までの説明を覆すものは何ら入っていなかったと認識している」と改ざんや隠ぺいに対する控訴人や、国権の最高機関たる国会の衆議院議長の認識、及び、議長の行政府に対する要請と著しく異なった答弁をしており、出廷しての答弁が求められる。
さらに第194回国会冒頭解散の違憲性、違法性及び、公職選挙法第一条に基づく控訴人の選挙権、被選挙権侵害に関する答弁も求めたい。蓋し、菅官房長官も当時の解散前の記者会見で第194回国会の解散権は、総理の専権事項であると述べており、総理以外の人間には答弁能力がないと思われるからです。

 麻生太郎財務大臣 財務省の最終的な責任者である。
改ざんについて、H30年5月8日の閣議後記者会見の中で「どの組織でも改ざんはありえる。組織全体としてではなく、個人の資質が大きかったのではないか」「改ざんが組織全体で日常茶飯事で行われていることは全くない」と述べている。これは控訴人や国権の最高機関たる国会の衆議院議長の認識、及び、議長の行政府に対する要請と著しく反するものであり、改ざん問題の違憲性、違法性の認識に対する答弁を求めたい。
        

 佐川宣寿前国税庁長官 改ざん、廃棄がなされた当時の理財局の最終責任者
調査報告書では、何故改ざんされたのか「国会審議が紛糾するのを避けるため、当時の理財局の幹部職員が改ざんを進めた」と認定している。又、佐川前理財局長の国会で答弁した内容を踏まえ、誤解を生みかねない内容を極力含めないように改ざんを行ったとしている。その上で、国権の最高機関たる国会に対し決算文書の改ざん作業を行い、改ざん後の文書を提出したことはあってはならないことで、不適切な対応であったと総括している。
 それに対して、H30年3月に行われた証人喚問で、安倍氏、昭恵氏、麻生氏などの指示はないとする一方、佐川氏は、改ざんを、いつ、認識したのか、だれがどのような理由で改ざんを指示したのかなどについては、刑事訴追の恐れがあるとのことで40回以上も証言拒否している。
国権の最高機関たる国会の衆議院議長は、政府に対して、その経緯、原因追求を求めており、又、被控訴人自らも求めている具体的事実を明らかにするためにも佐川氏の出廷、答弁は不可欠である。

 総理夫人安倍昭恵氏、昭恵氏付け元職員谷査恵子氏  安倍昭恵氏が当時、森友学園名誉校長に就任していた。
 公表された交渉記録の中に、安倍総理の妻の昭恵氏付きだった谷査恵子氏が、財務省理財局に問い合わせた記録が含まれており、問い合わせた2日後の応接記録には、財務省の担当者とのやり取りが記されている。また、谷氏が問い合わせた結果を森友学園に伝えたこと、昭恵氏にも報告していたことが記されている。財務省職員による改ざん、廃棄などの違憲、違法行為への関与、違憲性、違法性の認識について答弁を求めたい。
 
 最後に、総括として下記の陳述も行った。

 裁判官、控訴人は、主権者として、選挙、被選挙権者として日本国憲法、公職選挙法が求める民主政治の健全な発達を、現在、将来の国民のために、切に望んでいます。そのことが、日本国民の基本的人権を守る最後の砦だからです。このことは、国権の最高機関たる国会の衆議院議長も同じ思いだと思います。
 国権の最高機関たる国会に対して衆議院議長が、その任を果たしていないという発言は、日本国憲法における国会と内閣のチェックアンドバランス機能が機能していないことの証左であり、そうした中で、唯一残されたものが、主権者たる国民の権力的契機である選挙権、被選挙権であると思う。
 国権の最高機関たる国会の衆議院議長の行政府、立法府に対する警告は、我が国の民主政治がその崩壊の崖っぷちに立っていることを表しており、その発言はあまりに大きい。
 裁判官、控訴人は、司法府に、切に、適切で妥当な司法判断を求めたいと思います。

 我が国の現代立憲民主主義は終焉を迎えようとしている。
 しかし、このことは、世界各国で生じている事実でもあり、現実である。

    平成30年10月21日  文責  世界のたま

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です