よくあの頃に戻れたらと言うことがある。
私自身は、過ぎ去った時に戻ってみたいなどと思うことはない。戻ったところで同じ結果となるだろうと思っていることと、その時の自分は、その時間においては、そうしかできなかった事実を大切にしたいという思いがあるからだと思う。
以前、他の提言の中で、時間と言うものを取り上げたことがあったが、今私たちが為さねばならないことで、よく言われることに歴史を振り返ることがある。
私は思うのだけれど、今、私たちが為さねばならないことは歴史をただ単に振り返ることではなく、時代を巻き戻すことではないかと思う。
私たちは利便性や、合理性の追求の中で、一見、たくさんの物を得ることができたと錯覚しているのではないのだろうか。
スピード化の中でおそらく、以前は見れていたもの、感じることができたものを見落としてきているのではないだろうか。たとえば、確かに新幹線や、高速道路や、飛行機の移動によって、時間を得た反面、出会えたであろう多くの人達、見ることができた多くの風景、しっかり考え、想像する力、そんなものを失ってきたのではないのだろうか。
介護現場の中でも感じることがあるが、生活圏と施設との点と点の生活があたりまえになってきている。そこには生活空間としての面は存在しない。
何でもそうなのだけれど、不便さがあれば、そこには摩擦が生じて、人は悩み、苦労して、いろんな感情が生じる。
利便性や、合理性を求めると、そこには、より多くの道具、もしくはより便利な道具が介在することは避けて通れない。
道具と言うものは便利な反面、心を持っていない。
心がなくなった社会、人はそういった社会を作るために生きてきたのであろうか、これからも生きてゆくのだろうか。
今、私たちに必要なことは、時間を巻き戻す勇気ではないのかと思う。