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安保関連法の施行を迎えて

今、私はあと40分もすれば安保関連法が施行されることを考えながらこの文章を書いている。この文章を書き終えたときにはすでに施行されているであろう。

 安保関連法については憲法違反であることが明らかであり、そのことについては現在広島高裁に控訴しており、もう35分もすればいったんは施行されはしても、その執行停止が認められることを切に願っているが、それとは別な意味で私たちはまづ現在世界各地で起こっている紛争について理解しなければならない。

 たしかに世界各地で現在紛争が生じており、多くの人たちが傷つけ合い、多くの子供たちがその犠牲になっている。

 それらに対して先進国と呼ばれる国々が対処しようとしていることは事実であるが、そもそもそれらの多くの紛争の原因を作ったのは先進国と呼ばれている国々であり、その理由も彼らの覇権争い、石油をはじめとする資源争いの結果である。

 かつてアメリカのブッシュ大統領が悪の枢軸と語った、イラン、イラク、北朝鮮で言えば、そもそもイランに対してはその石油資源を狙ってイギリスが、そしてアメリカが軍事支援してイランを軍事大国化したのはアメリカ自身である。その後、イランイラク戦争で今度はイラクのフセイン大統領を軍事的支援し、軍事大国化したのもアメリカであり、そのイラクを9.11後、実際には存在しなった大量破壊兵器を有するとしてイラク戦争を起こし、フセイン大統領を殺害したのもアメリカであり、それを支援したのが我が国日本を含めた先進国である。また日本が植民地化していた朝鮮半島において戦後、南北で争った朝鮮戦争を引き起こしたのもその後ろ盾であったソ連、中国、そして西側先進国の覇権争いである。

 今も泥沼化しているアフガニスタンを見てみよう。そもそも冷戦時代、アフガニスタンに介入したのがソ連である。それに対して戦ったビンラディンを軍事的に支援したのがアメリカである。その後9.11を起こしたとしてかつては軍事支援していたビンラディンを引き渡すようにアフガニスタンに介入したのもアメリカであり、最終的にアフガニスタンではなくパキスタンに潜んでいたビンラディンを殺害したのもアメリカである。

 次にパレスチナ問題を見てみよう。そもそもパレスチナの地に住んでいたのはヘブライ王国の時代には確かにユダヤの人たちであったが、その後パレスチナの人たちが生活をされていたのも事実である。イギリスの統治下の元、オスマントルコとの戦いの中でイギリスがその戦いを有利にするためにアラブ人にはアラブ国家を、ユダヤ人にはユダヤ国家の建国を双方と約束したため、その中で紛争が生じてしまい、イギリスが匙を投げた中、国連も解決できず、ユダヤ人のロビー活動によりアメリカの後押しの中で1948年にイスラエルが建国され、その結果として今日までパレスチナ問題が続いている。

 インドシナ半島を見てみよう。戦後インドシナでは多くの国が独立し、その中にベトナム、カンボジアもあった。ベトナム、カンボジアもインドシナ戦争を経てフランスから独立を果たしたが、ベトナムではソ連、中国とアメリカの覇権争いの中でベトナム戦争が生じ、その覇権争いはカンボジアにもおよび、結果としてポルポト政権を生んでしまい、中国の文化大革命の影響もある中、3年間で100万とも300万ともいわれる人々が殺害されている。
 
 1960年代アフリカでも多くの国家が独立を果たしたが先進国が植民地化した際に引いた国境線によりそこに住む民族が分断されたこともあって独立後も多くの地域で内戦が今現在も続いている。

 日本を顧みてみても戦後、短期間のうちに高度成長を成し遂げ今日の経済大国となれたのも日本国民の努力もあったが、朝鮮戦争、ベトナム戦争におけるアメリカ軍を介した特需が大きな起爆剤となったのも疑う余地のない事実である。他国民の多大な戦死者を含む被害の中で私たちは現在の恵まれた生活を手に入れたのである。

 私は、地中海を死を覚悟して渡る小さな子供たち、国境線で足止めされて金網越しに泣く子供たち、シリア、パレスチナの爆破された建物の中で震える子供たち、アフリカの飢餓の中で骨のむき出しになったやせ細った子供たち、彼らを見るたびに、彼らの犠牲の中で私たちの生活があることを悲しく思う。

 私たちが今なさねばならないことが何なのか、それは決して武器を手にして私たち自身を守ることではなく、己を捨ててでも他者を受け入れる、理解しようとする気持ちであり、行動であると思う。

 歴史に目を閉ざすものは現在、未来に対しても盲目である。そのことを痛感する。

   平成28年3月29日    文責   世界のたま